現しよ(往復書簡 河瀨直美×是枝裕和)

ドキュメンタリー
現しよ(往復書簡 河瀨直美×是枝裕和)

1996/60分/8mm

河瀨直美と是枝裕和が、8ミリフィルムで綴る往復書簡。
1995年、河瀬が「につつまれて」「かたつもり」を出品していた山形国際ドキュメンタリーフィルムフェスティバルで二人は出会った。お互いの持つまなざしを確かめあおうと、横浜美術館主催の「煌ら」と題した上映会での発表をめざしてこの作品に取り組みはじめた。

物語は、河瀨の映像から始まり、電話をかける音のみが暗闇に響く...。電話の向こうでは、"只今留守にしています..."と録音された是枝の声が返ってくる。想いとは裏腹に冒頭からどこかすれ違う二人。やがて河瀬のまなざしは、自分を取り巻く日常風景を淡々と撮りため、是枝へつきつける。しかし、まるで自己紹介のように見えるそれら河瀬の日常はどこか空虚だ。しかしその空虚さをわかってもらうことでしか、真には向き合えないのだと河瀬は訴えていく。

一方、初めて8ミリカメラを手にした是枝は、カメラを通して対象を見つめることへの恐怖・不安を感じ、"撮れない"と独白する。撮る事でむきだしになってしまう自分の、からっぽな部分をさらけだしてしまう事への恐怖。その緊迫した空気は見ている者をも飲み込み、痛みが実感として押し寄せる。

それぞれの"まなざし"を欲する二人の、どうしようもなさが見るものに訴えかける。

是枝裕和 1962生まれ 映画監督
代表作品 「幻の光」、「ワンダフルライフ」、「DISTANCE」
映画のほかにもドキュメンタリー番組、 CMなどで監督として活躍しており、 近年では若手映像作家のプロデュースも手がけている。